シールの専門家が教える抗菌・抗ウイルス・除菌対応型シールの作り方
新型コロナウイルスで色々と世間が騒がしい昨今ですが、日頃作るシールでも抗菌・除菌に対応出来る方法を考えてみました。
使用されるユーザーが接触感染を防ぐ目的でシールを貼った製品を殺菌・除菌する可能性が想定される場合は、ご参考までにご覧頂けましたら幸いです。
なお、世界初となる当社の抗ウイルス・抗菌においてSIAAマークを取得したシール・ラベル製品ブランド「HINODERIX™」も新たに発足致しました。
詳細については特設ページをご覧下さい。
このページでご紹介している内容
1.シール自体に抗ウイルス・抗菌効果を持たせる
シール自体に抗菌機能をもたせるためには、シール素材が抗ウイルス・抗菌効果を持っている素材を用いるしかありません。
当社では、SIAAマークを抗ウイルス・抗菌の両面で取得した世界初の印刷製品「HINODERIX™」を立ち上げました。
こちらは現在、法人限定ですがOEM製品の開発も受け付けております。
詳細はお問い合わせからご連絡下さいませ。
抗菌素材を使ったラベル素材としては、消臭機能、抗ウイルス性も併せ持つハルシックイが挙げられます。その名の通りシール素材が漆喰(しっくい)で出来ていて、抗菌・抗ウイルス性だけでなく消臭機能も持ったスグレモノです。
一般的には密閉された空間に対して効果を発揮するため、シール・ラベルの材料として使われることは少ないようですが、材料としては独特な凹凸もあって非常に面白い風合いを持っています。
印刷適性もあり性能も非常に良いのですが、表面の漆喰の細かな孔に吸着して抗菌・消臭をするという特性から、一定期間を経ると効果が減退してしまう。
水に濡れてしまうと効果を発揮するアルカリ性質を失ってしまうことから効力が無くなってしまうという難点があります。
勿論水濡れがなく、一定期間後に貼り替える前提であれば効果は抜群なので、オススメしたい素材ではありますが、特殊材料で単価が高く、印刷方式もオフセット限定となりますのでコスト高にはなりますが、ノベルティシールとしてバッグやポーチ、衣装箱などの脱臭・除菌用途として非常に高い効力を発揮致します。
ご興味頂けるようでしたら是非お問い合わせ下さい。
2.アルコールや次亜塩素酸水での殺菌に耐える仕様で作る
シールを貼った対象物ごと消毒用アルコールや次亜塩素酸水で除菌しても性能が正常に保たれる仕様の考え方をご紹介致します。
当社で生産協力している次亜塩素酸水(kasselwater)はコチラ
※接触感染を防止するもので、飛沫感染までは防げません。ご了承下さい。
〜〜 一般的なシール・ラベルについて 〜〜
シールは当然インキによって印刷表現がされているのですが、実は「濡れたまま紫外線を浴びるとインキの退色(色褪せ)が顕著に起こる」という事象が起こります。
つまり、次亜塩素酸水のように普通の水と同じように扱える除菌剤であってもシールに対して噴射し、濡れた状態で直射日光にさらされると退色しやすいというわけです。
耐光インキという退色しにくいインキもあるのですが、実は濡れた状態での直射日光下では普通のインキと同じレベルで退色します。※ちなみに、最も色褪せしやすい色は黄色で、「黄色→赤→青→黒」の順で耐光性が強くなります。剥がし忘れたポスターが青と黒だけになっていたりするのはそのためですね。
つまり、インキを濡れないように守ってあげる必要があるのですが、そこで登場するのがラミネートフィルムという印刷表面の保護フィルムです。おおまかに、PPとPETという素材のフィルムがあるのですが、
PPは短期〜1年程度、PETはそれ以上使う場合に採用頂くと宜しいかと。
PPは素材自体が紫外線によって劣化しやすく、長期仕様にはあまり向いていません。基本的に極端に大きな差にはなりませんので、安心したい方はPETフィルムを推奨致します。
もの凄い頻度で擦り洗ったりする予定で、擦過キズが入る心配があれば超耐候ハードコートラミネートという材料もあります。次亜塩素酸水や除菌スプレーを吹きかけるのは水濡れに近い使用環境負荷が想定されます。
ラミネートフィルムだけでなくベースとなるシールの材料もフィルムベースで、かつ溶剤系粘着タイプであることが望ましいです。
何度も濡れたりする場合は、紙素材の場合はラミネートをしていてもシールの側面から浸水して紙が浮き上がって剥がれてしまいますし(専門用語で層間剥離という現象です。)
水溶性粘着剤は、やはり水性なので剥がれの原因になったりします。これらの材料の仕様設計は非常に複雑ですので、是非専門業者にお問い合わせされることをお勧めします。
使用環境や用途、貼付け期間の目安をお聞かせ頂けましたら最適なご提案を致します。
〜〜 感熱印字シール(サーマル)について 〜〜
紙や合成紙フィルムなどの表面に熱によって黒く発色するコーティングを施されたシールで、専用のプリンターで発行することで事業者が手軽に小ロットで情報を印字したシールを発行することが出来ます。
食品では内容表示や賞味期限の表示、製造業では生産ロット表示などを記載する管理、物流ではダンボールなどの追跡番号や内容物表示、病院では患者さんと投薬する薬の識別管理といった具合に非常に幅広い用途で普及しているシールです。
熱で発色するなら別に消毒は問題ないのでは…と思われがちですが、実はこの感熱印字ラベル。。。一般的なものではアルコールを吹きかけると蒸発する時の気化熱で発色してしまうのです。
アルコール吹きかけたら白無地ラベルが真っ黒に…。印字内容も判読出来なくなってしまいます。
ですので、アルコール除菌をする場合はアルコール耐性をもったタイプに変更されるか、印字方法を熱転写に仕様変更されることをオススメ致します。
アルコール耐性のある感熱ラベルに変更する場合は、事前にサンプルをお渡し出来ますので、お持ちの印字ラベラーとの相性や設定のご確認を頂いて本生産へ切り替えて頂くことをオススメします。
さらに、熱転写の場合はインクリボンという印字用のリボンを使って物理的に情報を転写していきますので、紙以外の素材にも転写可能です。つまり、水に強く熱にも強いフィルム素材のシールができるんですね!
インクリボンを使うのでコストとしては単純な感熱印字シールよりもかなり割高になってしまうのが難点ですが、当社の実際の制作事例として「食品を真空パックしてラベルを貼ったまま熱殺菌処理した後に冷凍する」というような過酷な条件でも問題なく使えるシールを作ったりしています。
こちらもシール材料とリボンの相性が複雑ですので、ご検討の際はやはり専門業者に相談の上、サンプルを取り寄せて印字して実際に使われる環境での負荷テストを行って下さい。
使用温度の範囲によっては粘着剤のカスタマイズが必要となりますが、当社にはフレキシブルな開発をしてくれる開発パートナー企業が複数社おりますのでお気軽にご相談下さい。
3.銀色のシールに抗菌効果はあるか?
銀イオンには抗菌効果があるということでTVCMなどで色んな製品情報を見かけますが、銀色のシールであれば抗菌効果があるのでは???と思われる方がいらっしゃるかと思い、念の為。
はい。もうお分かりですよね。
銀色のシールに抗菌効果はありません。笑
ホイル紙と呼ばれる銀色の紙素材シールは、紙にアルミホイルが貼り付いているようなものですし、銀色のフィルムは、透明のシールに銀色のメッキをしたものになります。
ただ、銀色のシールにはツヤとケシという2種類がありまして、中でもフィルムのケシにはサンドマットと練り込みという2種種類が存在しています。
サンドマットは元々ツヤのある表面を荒らすことで平滑度を無くしてツヤ消しにしてしまっているもので、練り込みはシール材料自体にマット感のある材料を含ませることでツヤ消しにしているという違いがあります。
つまり、サンドマットは荒れている表面が埋まるとツヤに戻ります。
簡単な話、サンドマットの上にラミネートを貼ると荒れている面に粘着剤が入って埋まりツヤになってしまいます。勿論練り込みはラミネートしてもマットのままです。
つまり、次亜塩素酸水や除菌スプレーなどを振りかけていると、経時で斑にツヤ部分が出来てしまって意匠性を損なう可能性があるんですね。
ですので、除菌や抗菌使用環境が想定される銀ケシの材料を使用される場合は、ラミネートフィルムの有無を問わず練り込みタイプの銀ケシフィルムを推奨致します。
ー 終わりに ー
いかがでしたでしょうか。
新型コロナウイルスの猛烈な拡散は中々収束の目処が立ちませんが、対接触感染防止の意味で製品に貼られたシールがお役目御免となるまで、確実に情報を表示し続けることのできる仕様であるかをご確認・ご検討頂けましたら幸いです。
様々な見解があろうかと思いますが、文字通り小さなシールからもコツコツと。
抗菌環境を整えて、新型コロナウイルスの根絶を目指しましょう!