「デザインのひきだし49」〜No.2 表紙 仕様設計編〜
やる気満々の社長とノリノリな資材メーカーをよそに、現場にはとんでもない緊張感が漂っている。
しかし時は待ってくれない。〆切という名の納期はそうこうしているうちに刻々と迫ってくるのだ。
しかし今回のオーダーはそもそも加工機のカタログ値(310×310mm)を大幅に超える263×330mmというバケモノサイズ。現場が不安に駆り立てられるのも当然といえば当然だ。(社長だけが浮ついていて現場は殺気立っていたのは今だから言える話。)
いつも金属版でお世話になっているSakaePlusさんから安定の素晴らしい銅版が到着。分かってはいたけどデカい。規格外にデカい。
下層の銀箔版も大きいのだが・・・
上層の金箔版のほうが、断ちトンボがある分よりデカくなってる!!
(オーバーサイズすぎて熱板からはみ出ちゃってる。)
こんな面積の箔を押し切れるだろうか・・・と高まる緊張感をヨソに、間髪入れず日伸製作所さんから刃型が届いた。こちらも当然規格外にデカい。
データも見ていたしサイズ感は想像もしていたが、改めて目の前に現れるとサイズ感に圧倒される。しかもこのサイズ、シールの刃型屋さんのテストプレス機に入らないため、どんな精度で加工されているかの想定が出来ない。今回の刃物(ゼンマイ刃)は職人さんの曲げ方が水平でないとシールの台紙まで刃が入ってしまうのだが、デカい×変形×多面付けという地獄条件。刃型の全容を見ただけで現場は恐ろしい調整作業を覚悟し、現場全体が一気に不安で覆われていった・・・。
チース(刃型を設置する板)全面に貼り付けられた今回の刃物。シール加工経験が一度でもあればこの恐怖感はご理解頂けるはず。
加工面積310×310をほこる弊社最大サイズの加工機、イワサキインターナショナルのHD-330のチースから刃型のベースがしっかりはみ出してくれている・・・
箔版と刃型をセットして、ワイワイガヤガヤ物珍しさに湧いていたところに社長が現れて一言。
「デザインのひきだしの編集長さん、◯日に来社されることになったから。そこまでに姿見えるところまで作れるようにしといてね♪」
完全に後がなくなった現場。とにかくやってみるしかないよな。。。と作業に取り掛かりはじめた。
「長いこと箔押ししてきたけどこんな大きいサイズ・・・切ったことないわ・・・」と副工場長。
「プレスボードも面積足りん・・・二枚くっつけてやるしかないか・・・」
手を切らないように気をつけつつ、ザクッと。
箔版は熱に反応するボンディングテープという特殊なテープを使って熱板に貼りつけていきます。通常のシールの大きさなら1列か大きくても2列のところ、あまりの大きさに4列も貼ることに。(大きすぎてすべてが未経験ゾーン・・・)
箔版の裏面に霧吹きで水を吹きかけ、ボンディングテープと箔版が密着するようにします。
(箔版が熱版とちゃんと密着していないと、加工の衝撃で箔版が剥がれ落ちることに!)
テープがヨレないように、熱々に熱された熱板に慎重に箔版を乗せていきます・・・
水平に置くのも結構大変そう・・・
覚悟を決めて熱板に置いたら、ギュッと押さえつけて熱板に箔版をくっつけていきます。
ジュジュジュジュジュ・・・と版の下にものすごい熱が加わっているのが音からも伝わってくる。押し付けていくと霧吹きで湿らせた水が沸騰して溢れ出して来くるのが面白い。
当社過去最大サイズの箔版セットは無事完了、プレスボードの準備も整った。大きさに戸惑いながらもなんとか順調に加工前の準備が完了!
機械スペックを大幅に上回る今回の製品・・・はたしてこのまま無事加工を終えられるのだろうか。技術者の眠れぬ夜はまだ終わらない。
つづく