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「デザインのひきだし49」〜No.3 表紙 実製作編〜




やる気満々の社長とノリノリな資材メーカーをよそに、現場にはとんでもない緊張感が漂っていたのだが、とりあえず箔版と刃型のセットが完了。漠然とのしかかってくる不安も少しだけ解消し現場にも追い風が吹き出した。いよいよ加工にとりかかる。


圧バランスをチェックするためにプレスボードにカーボン紙で型をとっていきます。




おお〜!!!実際にデザインが見えてくるとまた違った感動がありますね。。。
大きすぎてプレスボード1枚に収まりきらないため、プレスボードを柄の切れ目で繋ぐことに。こんなのやったことねぇよ・・・と副工場長のボヤキが聞こえる。




この調子でいざ箔押し!箔の抜け感がとても気持ちがいい!!思った以上に順調な滑り出しで、スペック超えるサイズにも関わらず機械の軽い加圧音からも大きな無理がかかっていないことが伝わってくる。
テンションもクイッと上げたおかげで、はじめから安定してとてもきれいに箔押しされている〜!!




全体がきちんと押されているか、ちゃんとルーペで確認を!!今回はサイズが大きい分確認箇所も多く、デザインも細かい。確認作業がとても大変そう。

「グッズ」の文字の網掛けなどの箔の抜け感やベタのちょっとしたピンホールなど、見なければならない範囲が広くてエラーの発見が難しそう・・・




どれどれ・・・と、事務所の営業も現場の技術者も大集結
迫力満点に動く機械に惹きつけられるように役職や職種関係なく人が集まってくる。




また、箔押し加工中の確認は複数の人の目ですることに。こういう自然発生的な現場同士のコミュニケーションは作業においてとても大切なのです。



下層の銀箔を押し終わったら、その上にシリコンPETを貼っていく。表面がツヤツヤに大変身!
因みにシリコンPETは、上からシールが貼られてもきれいに剥がせる便利な素材。




伝わってほしいこの艶々感・・・!!!銀箔がさらに輝きを増していく・・・




シリコンPETを貼り終えたら、もう一層シールを貼り合わせていく。銀箔が隠れていくのを見るとなんだかもったいない気もしてくるのだ。マスクされていくのがとても切なく、花火大会のフィナーレ前の終わりなのかな、もう見れないのかなっという気分になっていた。




積層完了!ここまでで表紙を構成する全ての材料を貼り終えた。次はいよいよ上層の箔押しとシールをめくってもらうための抜き加工だ。
まず抜き加工の調整から。今回の刃物はくどいようだが規格外のサイズと面付けで、ここについてはメーカーさんも結構不安視されていた。今回刃型を依頼した日伸製作所さんでは、出荷する前に刃型にムラが無いかデモ加工機でテストをするのだが、今回はデモ加工機の最大サイズも超えていたため、刃型の抜きテスト無し。熟練の技術者のワザを信じる他なかったのだ。


いざ尋常に・・・
ゴンッ ゴンッ ゴンッ・・・ と刃物が入り始めた・・・




全てのシールが抜けたであろう状態が見えたところでシールをめくってムラ(シリコンPETや下層まで刃物が食い込んでいる状態)がないかをチェックしていく。


ん? ん? おおぉっ???めくる社員が全員驚きの声を上げ始めた。なんとムラは一切無し。調整の必要が無い状態だったのだ。この凄さはシールの加工を少しでもしたことがある人ならご理解頂けるだろう。刃物が全て水平に曲げられ変なテンションがかかっていない状態でセットされていないとありえない状態なのだ。まさしく神業、これこそ技術の粋である。あまりに驚いた社長は日伸製作所さんに電話をして感激を分かち合っていたようだ。(声が大きいので加工していても聞こえてくる)


加工途中に刃物の入り方に変化が生じる可能性もあるので、念のためカーボンで型を取り、確認する。刃物のベースがはみ出しているのだから当たり前といえば当たり前だが、下チース(刃物の当たる板)にもほぼ全面に刃物の跡が残っている。改めてこの点数と形状でムラ取り作業を行うことになったとしたら・・・と考えるとゾッとする。(これはいまだから言える話)




最も心配していた抜きムラの心配が解消されたところで最後の箔押しへ。この工程で製品が完成すると考えると、早く完成形が見たいという気持ちがどうしても前に出てしまう・・・。




めっちゃ・・・かわいいやん・・・。。。

箔押しして残った箔に柄が写ってるのもすごく可愛い!!
こっちはこっちで魅力的・・・ゴミになるのがもったいないくらい・・・




素敵な金箔柄に目を奪われているうちに技術者は箔押しの位置と抜きの位置を合わせていく。
もう上層のシール材料で隠れてしまった下層の銀箔柄と位置を正確に合わせるのは中々に難しそうだった。ことある毎に全てのシールをめくり、刃物の抜け方や位置のズレをチェックしている姿に苦労が滲む。

最終工程まで終えた積層シールはオーダー通り断裁機で263×330mmに断裁して製造完了。出荷されていくのであった。




かくして出来上がったのがデザインのひきだし49号の表紙。これは当社の営業と現場、それぞれの未知への挑戦が詰まっている。シール印刷会社がシールで本の表紙を作るというのは前代未聞。おそらく後にも先にもこの1冊しか無いものではなかろうか。この偉大な挑戦に(無謀にも)取り組ませて頂いたグラフィック社様に心から感謝申し上げたい。


SNSで読者の皆様が「デザインのひきだし49」に好意的な投稿をされているのを見て、社員一同この企画に関われたことをとても誇らしく思えた。技術者の眠れる夜はようやく訪れた・・・

使用している写真は製造技術情報保持のため一部加工を施しています。






つづく


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