カボス絞り
あのカボス狩りから早1ヶ月。前回はまだ実が小さいものが多かったのでそろそろ頃合いかな…とカボスを収穫に向かった。今回は工場長を含む現場の数名と会長というメンバー構成だ。1ヶ月も経つと綺麗な緑色から鮮やかな黄色に変化するカボス。香りや甘みも全く違っているらしい。
前回のカボス狩りで人生で初めてカボスを味わったのだが、柑橘系が好きなのに今までなぜ食べてこなかったのだろうと反省するほど美味しかった。緑と黄色で味や風味が違うことを事前に教えてもらい、この日を今日か今日かと楽しみにしていた。
夕方になり、そろそろ収穫メンバーが帰ってくるのではと全員がソワソワしていた頃。
ガラガラッ
と勢いのいい音と共に搬入口が開き、「お疲れ様でーす」と言う声が飛び交う。お待ちかねの帰還だ。メンバーは顔も動きも疲弊した様子。ワタクシも前回カボス狩りから帰ってきた後のことを思い出した。まぁそれはさておき大事なのはカボスだ。ワタクシは黄色いカボスを待ちかねていたのだ。
黄色く実ったカボスのカゴのタワーを目の前にして、興奮気味の営業のK先輩。
残って作業をしていた現場も、この時だけはみんな集まってワイワイしていた。
一通り分配し終えると既に11月も中旬を迎え、工場も慌ただしくなってきた。ワタクシはといえば現場に足を運ぶことも忘れ、年賀状制作に頭を抱えて直向きにパソコンと睨めっこする日々を送っていた。それを気遣ってか、有難いことに包装部署のI先輩が声をかけてくれた。
I先輩:「広報さん〜、会長が下の休憩室でカボス絞っているよ!よかったら、取材しますか?」
ワタクシ(以下:ワ):「ほんとですか!ありがとうございます!!」
根が生えるほど長時間座っていた椅子から、重い腰を上げ現場へ行き休憩室の扉を開ける。
フワッ・・・
一気に鼻に伝わる柑橘系の香りが部屋中に広がり、香りの中心に会長が立っていた。
会長(以下:会):「バレたか(笑)」
ワ:「包装のI先輩から聞いて、取材に来ちゃいました!写真いいですか?」
会:「いいけど、印刷屋やのに何してんだって思われそうやな・・・」
ワ:「まあ、たまにはいいと思います!写真を撮る私のことはお構いなく!!」
ひとしきり分け合ったものの、収穫チームの採ってきた量は尋常ではなく、まだまだカゴの中にはたくさん残っていた。
ワ:「結構な量残ってますね・・・さすがに今日だけでは絞り終えられませんね・・・」
会:「そうやのお〜、今日中じゃあ間に合わんな。」
ワ:「にしても、すごい特殊な形の絞り機ですね!」
会:「そうやろ、これもう一つプラスチックの方もあるけど、耐久性がどうもあかんのや。」
ギュッとバーを握り、テコの原理でカボスを絞ってゆく。
ガラガラ・・・
休憩室の重たい扉が開く音と「失礼しま〜す・・・!」営業のK先輩がやってきた。
K先輩:「私、一つ絞って見たいです!」
会:「1個!?1個とは言わずにもっと絞らんか!!(笑)」
K先輩:「絞りたい気持ちは山々なんですけど、仕事が片付き次第もっと手伝います(笑)」
仕方なさそうにニカっと笑みを浮かべながら会長がカボスを半分に切り、K先輩が絞った。楽しそうにK先輩の声とワタクシの笑い声が休憩室に響き渡る。その後、選手交代で工場長や現場の協力もあり、無事絞り終え、2023年のカボスシーズンを終えた。
このカボスは毎年恒例の4月の新入社員歓迎会&BBQの時にも使われる。ワタクシが歓迎されたときは思いきっきりレモン汁でタンを食べたのだが、是非来春入社の新入社員にはカボスをオススメしたいものだ、この収穫のストーリーも添えて。
来年は大きく青々と育ったカボスは採れるだろうか。